• 三田村

躁(そう)状態は何が辛いのか!?

うつ病という病気については一般にもよく知られるようになりましたが,うつ病のような落ち込み状態や楽しさが無くなった状態が続いた後,今度は,快晴がやってきたかのように,妙に気分が高まり活動的になってくる,というメンタルの問題も存在します。


これは「躁うつ病」もしくは「双極性障害」と呼ばれます。


双極性障害の特徴は,「うつ」状態の時期だけでなく「躁(そう)」状態の時期もあることにあります。そう状態とは,気分が高揚したり開放的になったりして,活力に溢れ活動的になった状態です。また,怒りやすくなって人と口論したり,トラブルを起こすといったこともそう状態には含まれます。


そう状態になった人は,「自分はすごい人間なんだ!」今の自分にならなんでもやれる気がする!」といった自分自身に対する少々過剰な確信をもったりします。

また,「寝ているなんてもったいない!」睡眠時間を削って何かに打ち込んだり,相手からすると妙によく喋るようになったりします。注意が散漫になってミスも増えるかもしれません。また,いてもたってもいられず新しいことに次々チャレンジしたり,人の集まりに頻繁ににでかけたり,SNSで知らない相手にもやたらと接触するようになるかもしれません。仕事をしている人なら新しいアイデアがどんどん浮かび,プロジェクトを立ち上げることもあるでしょう。


そう状態というのは,うつ状態と比べると当人にとっても,ずっと楽で,いや,ずっと幸福な時間と感じられることでしょう。実際,私のオフィスでお会いする躁うつを抱えた方々も,「そう状態」の方が本当の自分の人生(うつが治った幸せな時間!?)と,初期の時期には捉えておられることもあります。また,困ったことに,心療内科や精神科に通院中の方でも,うつになったら病院にかかるけれども,そう状態になったら気分も晴れて困っていないので,通院を中断してしまうというケースもあります。


さて,そんな幸せで生産的に見える "そう状態"のいったい何が問題なのでしょうか??



これを読まれている方は次のような経験をお持ちではないでしょうか?

  • 友人や知人との集まりでとても盛り上がり,たくさん笑ってしゃべった後,帰宅してから「今日はちょっとしゃべりすぎちゃったな・・・(自分のプラベートなこと,冗談,噂話などなど)」とちょっと反省することはないでしょうか?(私はよくあるのでかなり抑えています)

  • お店のセールやライブに行って大興奮で商品を買いあさった1週間後,熱が冷めてみたら「余計なものを買いすぎた・・・」とちょっと後悔することはありませんか? さらに,よく月クレジットカードの明細が届いたら「おぉ!」という額が記載されていたらどうでしょう?(私はAmazonでよく本を買いすぎます)


これらは一般によくある例ですが,こんなことがそれなりの規模で,それなりの回数繰り返されたら,皆さんはどんな気持ちになるでしょう?


そして,この「そう」という祭りが終わると今度は「うつ」の季節が待っています。


ただでさえ,うつ状態になって辛く重たいところに,そう状態の時に自分自身が新たに作った友人から連絡が来ます。あなたが始めた企画も進めなくてはなりません。そして,クレジットカードの明細はあなたがうつであろうがなかろうが,容赦などしてくれないのです。

つまり,そう状態はそれ自体は気分としてはいいかもしれませんが,そこで自分自身がしたことは必ず返ってくるわけです。そして,うつの波も約束もしないのに再び返ってきます。

こうした気分と活動性の波を経験すること,それもコントロールできずに何度も経験してしまうことがどれほどに苦しいことなのか少しイメージいただけたのではないでしょうか。



現在,双極性障害は薬物療法および,それと併用しながらの心理学的介入法(心理教育,認知行動療法,対人関係ー社会リズム療法,家族焦点化療法)が有効とされています。


また,心理学的な方法として,ご自身で気分や行動の変化をモニターする力(セルフモニタリング)を高めることが特に重要とされています。当オフィスでは,医療機関と連携しながら,セルフモニタリング,認知行動療法,また認知機能の改善に有効性が示唆される方法としてマインドフルネスを用いた手法などを用いたカウンセリングによって,お越しになった方々の支援をおこなっています。



参考文献

  • American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 5th ed., Washington, DC, (高橋三郎・大野裕 (監訳),染矢俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉 (訳). (2014). DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.東京,医学書院

  • ロバート・P. レイサー, ラリー・W. トンプソン, Robert P. Reiser, Larry W. Thompson (原著), 岡本泰昌 (監訳), 貝谷久宣・久保木富房・丹野義彦 (訳) 2011 双極性障害 (エビデンス・ベイスト心理療法シリーズ). 金剛出版

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