三田村
恐怖症・不安障害のメカニズム(古典的条件づけによる説明)
他の人からするとどうということのない刺激(場所・人物・モノ・生き物)が怖くてたまらないという恐怖や不安は,人類にとってごくありふれた現象です。
学習心理学もしくは行動療法という心理学の立場から見ると,この恐怖症・不安障害のメカニズムは比較的シンプルに捉えることができます。
これは古典的なモデルですが,まず,恐怖症というもの自体は古典的条件づけ(もしくはレンスポンデント条件づけ)という現象で説明することが可能です。
古典的条件づけとは,心理学を習ったことがある人なら誰でも知っている「パブロフの条件づけ」の話です。
*以下,わかりやすさのために話は若干デフォルメしています。
パブロフという人物が,自分が研究用に飼育している犬に餌(肉片)をやるわけですが,パブロフはふと「あること」に気がつきました。それは,パブロフが餌を与えても与えなくても,その犬はパブロフが近づいてくる足音を聞くだけで,あたかも餌が目の前に提示されたかのように唾液を垂らしていたのです。
ここで何が起こったのかを整理してみましょう。
まず,肉片が提示されて,唾液を垂らすことは動物として自然なことです。
次に,足音を聞いて,唾液を垂らすことは不自然なことです。 (足音は唾液で消化するようなものではありません)
ここでの「足音を聞いて,唾液を垂らす」ことを「条件反応」と呼びます。
では,なぜこの条件反応が起こったのでしょう??
ところで,この話と恐怖症やパニック症の話がどう繋がるかお気づきでしょうか?
もちろん,恐怖症やパニック症の方がお困りなのは,たぶん足音でも唾液が出ることでもないでしょう。つまり,足音というより「何かの刺激」と出くわした時に「恐怖・不安の反応」が起こってしまい苦しいということでしょう。
話を戻します。
「足音を聞いて,唾液を垂らす」という条件反応が起こるようになった理由を調べた結果,次のようなことがわかりました。
その犬は,「足音がしてから餌が出される」という経験を繰り返した結果,
「足音を聞いて,唾液を垂らす」という反応をおこすようになったのです。
このように2つの刺激をほぼ同時に提示することを繰り返すことで,「足音を聞いて,唾液を垂らす」といったような本来不自然に思える反応を示すようになることを「古典的条件づけ」と言います。
そして,この現象は「足音」や「唾液を足らず」に限らず,恐怖や不安を引き出すような古典的条件づけもなされうることが後に明らかになったのです。
たとえば,「ある着信音なった後に,電話で怒号を浴びせられる」ということを繰り返すと,その電話の受けては「その着信音」を聞いただけで心臓がどきどきと高鳴り冷や汗が出て血の気が引くかもしれません。
これが恐怖についての条件づけなのです。特定の着信音というものもとは,なんともなかったはずの刺激が恐怖を引き出すきっかけに変わってしまう。これが古典的条件づけによる不安症・恐怖症の説明モデルです。このモデルをさらに応用すると,たとえばパニック症を抱える人がなぜそんなにも簡単にパニックに陥ってしまい,そして,そこからなかなか抜け出せないのかについても説明することができます。これについてはまた別の機会に書きたいと思います。
参考文献
三田村仰『はじめてまなぶ行動療法』金剛出版
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