• 三田村

パニック発作と予期不安

パニック症(もしくはパニック障害)は,10分以内にピークを迎えるパニック発作を繰り返すことと,そうしたパニック発作への恐れを特徴とする不安症(もしくは不安障害)です。パニック発作というのは,過呼吸など突然の激しい反応のことで,実は「過呼吸を起こすけれど,パニック症ではない人」がおられます(実はこれは重要なポイント)。


「パニック発作が起こったらどうしよう?」「また発作が起こるんではないか?」と不安になることを「予期不安」と言って,予期不安はパニック症のキーワードです。


パニック発作も予期不安もどちらもパニックに関連した不安や恐怖なので一見同じような不安に思えますが両者は違いがあります。まず,前者が差し迫った恐怖であるのに対し,後者はこれからどうなってしまうだろうという不安です。つまり,パニック発作という恐怖は現在志向ですが,予期不安は未来志向なのです。

別な言い方をすると,パニック発作は”恐怖そのもの”であり,予期不安は”恐怖に対する恐怖”であると表現することができます。


この違いはパニックに苦しむ人にとっては重要な意味があって,パニック症が問題となるポイントはこのパニックに対する予期不安(恐怖に対する恐怖)とそれへの対処にあるからです。突然,激しい心臓の鼓動や浅く激しい呼吸はそれ自体が怖いものではありえますが,それ自体はそれほど長く続くものではなく,後遺症の残るような話でもありません。

問題は「また起こるのでは?」というもっと曖昧な感じの予期不安と格闘して,自分自身の生活に制限をかけてしまうこと。つまり,急行電車に乗ることを避けたり,エレベーターに乗らないようにしたりすることで生活の範囲が制限され,さらにはどんどん予期不安が広がって以前はできていたことまでできなくなっていくことこそがパニックを「障害」たらしめるのです。



繰り返すように,予期不安は元々の怖かったもの(パニック発作)とは異なる,二次的な不安・恐怖です。ですから仮に一時的な不安・恐怖であるパニック発作が起こったとしても,それにあまりこだわらずにいつも通りの生活を続けることができたならばパニックは障害とはならないわけです。

パニック症の心理療法では,パニックの恐怖から無理に逃れようとするのではなく,パニックの恐怖と上手に付き合って行くことを学ぶことになります。

この方法は「内部感覚エクスポージャー」と呼ばれるもので,これを取り入れてのアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)という方法も有効です。これについてはまた別の機会に書きたいと思いますが,参考文献1のワークブックを実践されることでご自身で対応することも可能かもしれません。



参考文献

  1. 『不安・恐れ・心配から自由になるマインドフルネス・ワークブック―豊かな人生を築くためのアクセプタンス&コミットメント・セラピー』ジョン P.フォーサイス (著), ゲオルグ H.アイファート (著), 熊野宏昭・奈良 元壽 (監修), 西川美樹 (訳) 明石書店

  2. Eifert, G. H., & Forsyth, J. P. (2005). Acceptance & Commitment Therapy for Anxiety Disorders: A Practitioner's Treatment Guide to Using Mindfulness, Acceptance, and Values-Based Behavior Change Strategies: New Harbinger Publications. 三田村仰・武藤崇 (監訳) (2012) 不安障害のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) –実践家のための構造化マニュアル. 星和書店.


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