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なぜ対人不安は大きくなるのか!?: 社交不安障害,対人不安と自己提示

社交不安症/社交不安障害を抱える人は,他人から見られるような場面に対して,強い恐怖や不安を感じます。また,人前で何か変なこと(不自然に見られること,バカにされることなど)をしてしまうのではないか,また,自分が不安になっていることを知られることで否定的に評価されるのではないかと恐れます。実は,この傾向自体はいたって普通のことなのですが,それが生活に支障が出るレベルになったとき,「社交不安障害」という症状として考えられるようになります。


社交不安障害は,英語を訳した言葉で,英語では「social anxiety disorder」や「social phobia」と 表記します。「social」は「SNS: social networking service」の「S」と一緒で社会とか対人的な何かのことです。


「社交不安障害」というのは精神医学(DSM-5)の概念ですが,人の目が怖い,人からの評価が怖い,という現象,つまり,という現象は精神医学や臨床心理学の中だけで扱われてきた現象ではありません。

たとえば,社会心理学という学問領域では,古くから「対人不安(social anxiety)」や「シャイネス(日本語でよく言うところの「シャイな人」という意味です)」と呼ばれて多くの研究されてきました。


では,なぜ人は人を怖がるようになるのでしょうか?



ここで鍵となるのが「自己提示」です。



自己提示とは,他人が自分に対し自分が期待するような印象を持つように自分を相手や周囲に表現することです。

つまり,たいてい人は,他人の目に自分がどのように映るかを気にするものなので,うまく自分を見せようと試みます。これが自己提示と呼ばれるものです。


リアリー (Leary. M. R.)は,対人不安が起こるメカニズムについて検討し,ここで紹介した自己提示という概念を基に人が感じる対人不安の強さを以下のような公式でまとめました。



対人不安の強さ = f [ 自己提示の動機づけ × (1-自己提示に成功する確率) ]



一応断っておきますが,これは難しい式ではありませんので,ゆっくり見ていけば十分理解できるような式です。


つまり,この式が意味することは,自己提示をしたい状況であるほど(自己提示の動機づけが強い),対人不安が高まるということです。

ですから,対人不安が強い人は自分を良く見せたいとか,自分をこんな風に見てもらいたいという願望が強い人と考えることができそうです。


さらに,自己提示の動機づけが高い割に,自信がない(「1-自己提示に成功する確率」が低い)場合,その分,対人不安が大きく膨れ上がるということです。



これらを要約すると,

あまりにも強い対人不安を抱えている人とは,自分をうまく見せたいという思いが強い上に,その自信がない状態の人,といえます。



このリアリーの公式は,今となっては古典的なものではありますが,

強い対人不安がどのようにして起こるのかを直感的に理解するうえで,大変わかりやすいモデルです。




参考文献:

菅原健介 (2002) 4章 対人不安. 下山晴彦・丹野義彦(編) 講座 臨床心理学3. 東京大学出版会. p. 117-138


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