パートナーとの関係性:5つのQ&A
Q.1 「パートナーとの関係性はなぜ大切なのでしょうか?」
A. 「親密な関係性にはそれ自体で意味や価値が見出せます。」
相手が何を考えているのか分からない
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私たち人間は誰もが生まれながらに他者を必要とする生き物だとされています。実際,仲間やパートナーと切り離された感覚である“孤独感”を抱えると,私たち人間の心身は大きな不調を抱えるようになります。なかでも,パートナーとの関係性は私たちに特に大きな影響を与え,パートナーとの関係性が良好であるほど,心身の健康は保たれ,より幸福になります。一方。パートナーとの関係性が悪化してくると,私たちの身体症状や精神障害のリスクが高まることが多くの研究から指摘されています。加えて,子供をもつカップル(夫婦)の場合,二人の関係性の不和はさまざまな形で,子供に対し,心理的,身体的,また行動的な苦痛を与えることがとてもよく知られています。
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こうした実際的な意味で,私たちにとってパートナーとの関係性はとても重要なものだといえます。ただし,私たち人間にとっては,パートナーとの関係性とは,単に私たち(や子供たち)の心身の健康を保つための手段ではありません。古くから,また世界中で,音楽や文学といった芸術作品のモチーフにもしばしばとりあげられてきたように,また,哲学や思想においても主張されてきたように,親密な誰かとの関係性はそれ自体で私たちにとって意味や価値があるといえるでしょう。
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他の誰よりも,こころが近くにあるはずの相手が,一体何を考えているのか分からないということは,それだけで気持ちを動揺させるかもしれません。しかし,現実には,“こんなに近くにいて,ずっと一緒に過ごしてきたのに”,相手が何を考えているのか分からない,ということも珍しいことではありません。
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それは,相手が怒っていることの理由がいつも分からないといったことかもしれませんし,いつも自分のことを話してくれないから分からないのかもしれません。
Q.2 「パートナーとの関係がうまくいっていないことは,“普通でない恥ずかしいこと”なのでしょうか?」
A. 「いいえ。そんなことはありません。」
できるなら,相手のことをもっと信頼できるようになりたい
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当初はとても良好だった二人の関係が,時を経るなかでなんだかうまくいかなくなってしまうことは,とてもよくある自然なことです。数年~10年といった長期にわたる縦断調査の結果からも,カップル関係の質は時系列でみると低下傾向にあることが知られています。また,日本では夫婦のおよそ1/3組が離婚にいたると推定されていて,結婚を選択したパートナーたちにとっても“離婚”は一般的な選択肢の一つです。
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“パートナーと別れる(離婚や破局)”という選択は必ずしも悪いことではなく,むしろ,それこそがお互いにとって最善の選択である場合もしばしばあります。しかし,互いに共に生きていたかった最愛のパートナー同士でありながらも,二人が別れざるを得ない状況に追い込まれたのだとしたら,それは,いずれのパートナーにとっても不幸な結末でもあるといえそうです。興味深い研究知見として,関係を維持し,かつ幸福なカップルであっても,その多くは解決不能な課題を抱えているとされています。現在,お二人の間に解決困難な課題があったとしても,それもまたとても自然なことであり,そして,そのことは必ずしもお二人の関係が不幸な結果になることを意味してはいないのです。
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人間は,無条件で他者を信頼できるようにはできていません。一般的に,カップルは時間をかけてお互いへの信頼を少しずつ築いていくものです。
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その一方で,カップルにおける信頼関係とは,一度築いたらめったなことでは崩れない石垣のような頑丈なものというより,むしろ,日々,太陽の光と水とを必要とする芝生のようなものに近いのかもしれません。
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青々とした美しい芝生は,そこにあたりまえのように存在してみえて,実際のところは日頃からのケアを必要としているのです。
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一旦,崩れかけてしまった信頼,または崩れてしまった信頼を再生させるには,外からのサポートが必要かもしれません。
こどもへの影響が気になる
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良好な夫婦関係を維持することが,しばしば難しいことが事実であるのと同様に,両親間のいがみあいが子供の心身の健康を損ねることはよく知られた事実です。離婚するかしないかに関わらず,良好な両親の関係性こそが,こどもの健やかな成長には必要です。
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パートナーとの関係性(カップル関係)とはどういったものなのでしょうか? ここでは,よくある5つの質問にお答えする形で,カップル関係の基本的なことについて解説していきます。

