心理療法には非常にたくさんの種類があります。
そこで,心理療法はよく,精神分析やユング心理学を代表とする力動的アプローチ,来談者中心療法やフォーカシングを代表とする人間主義的アプローチ,そして,行動療法,認知療法,認知行動療法を代表とする認知行動的アプローチの3つの大きな流れがあると言われます。
認知行動的アプローチの特徴は,認知理論や行動理論といった理論もあるものの,どちらかというと理論を擁護するというよりも,実証的なデータから理論を見直すことに積極的なアプローチです。
認知行動的アプローチでは,さまざまな仮説を立てて,実際に実験をしてそれを確認したり,質問紙調査というアンケート形式の心理検査に回答してもらうことで統計的に仮説となるモデルを検証したりといった地道な作業を繰り返して発展してきました。
たとえば,「うつ病を抱える人では考え方がネガティブになるという傾向がある」という仮説があるとします。そんなときは,実際にうつ病の患者さんのグループとそうではない一般の人のグループとを対象に考え方についての質問紙に回答してもらいます。その質問紙の得点に実際にうつ病患者さんと一般の人とで差があるかどうかを統計的に確認するといった研究方法があります。
そうした実証研究を積み上げることで,無限に作り得る仮説のうち,どの仮説がどのくらいもっともらしいかを明確にしていきます。実はこの作業を繰り返していくと,かつては常識と信じられていた仮説が後になって覆されるようなことも起こります。
たとえば,不安症(不安障害)に対しては「系統的脱感作」というリラクセーションしながら段階的に恐怖に向き合うという技法が理論的にも妥当で,もっとも効果的な技法のひとつだとされていました。
しかし,しばらく研究を続けていくと,リラクセーションは必ずしも必要でないことが明らかになり,系統的脱感作は「エクスポージャー」という技法へと洗練されることになったのです。
また,うつ病の患者さんは「認知」と呼ばれる物事の捉え方がネガティブ過ぎるので,この認知を変えていくことがうつ病の治療の鍵であるとして認知療法が生まれ発展しました。確かに認知療法はうつ病治療に効果的な心理療法の一つではありますが,現在では,認知を変えること以上に,認知を認知として捉える(「考えたことは,考えたことにすぎない」と一歩下がって自分の考えを見つめること)がむしろうつと上手に付き合っていく上での鍵であることが指摘されるようになってきました(実は,この発想は「マインドフルネス」をキーワードとした新たな認知行動療法の誕生に繋がっていくこととなります)。
このように,認知行動的アプローチの特徴の一つは実証研究による絶え間ないアップデートにあるといえます。
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